Report活動レポート
ケルト文化に触れながら
国際感覚を養う
中森未来 高崎経済大学
(地域政策学部3年)
- 留学期間:
- 2010年9月~2011年8月
- 留学先:
- アイルランド
ダブリンシティ大学(DCU)
さまざまな国の学生と交流するなかで国際感覚を養う
私は約10か月間、アイルランドの首都にあるダブリン・シティ大学にて、現地の学生とともに国際関係論を中心とした社会科学の講義を受けてきました。比較的安定した気候の下、人柄も治安も良好な土地で心身ともに不自由なく勉学に励むことができ、大変充実した10か月間でした。その様子を報告したいと思います。
大学での講義は1コマ60分と短い時間で行われ、そのほとんどが少人数制でした。そのため、教授との距離が近く、集中力を乱すことなく受講することができました。また、授業で使用する資料は事前にウェブ上で確認できるようになっており、学生への配布物を減らして紙を節約するという環境保護への配慮もありました。このような教育的にも環境的にも効率の良い授業システムが、高等教育機関には必要とされているのだと感じました。
ダブリン・シティ大学には主にEU圏内から留学に来る学生が大勢いました。そのため、考え方や価値観の異なる学生と授業中に議論したり、彼らとお互いの歴史や文化、風習について話し合ったりと、国際感覚を養う上で非常に貴重な経験ができたと思います。同じく海外で学ぶ者として、自分よりも英語が話せる留学生から刺激を受けることも数多くあり、彼らとの触れ合いがより一層勉学に励む糧にもなりました。
アイルランドの文化、そして人々の温かさに触れる
学内には日本語を学ぶ学生もいたため、彼らとお互いの母語を教え合いながら交流することもありました。定期的に集まり会話や文化体験の機会を共有することで、語学力を高めたりアイルランドという国に対する理解を深めたりと、日本では味わえない経験をすることができました。また、アイルランドには日本料理店やカラオケ店、日本雑貨店がたくさんあり、アイルランドの人々の日本への興味・関心が予想以上に高いことに驚きました。あるアイルランド人の友人は、「西洋の人々にとって、日本という国は神秘的に映る。だから自然と関心を持つようになるのだ」と話してくれ、海外から見た自分の国というものを知り、日本を客観的に見つめる機会を持つこともできました。
今回アイルランドに留学し、現地の人々との触れ合いの中で強く感じたのは、人々の温かさ、人当たりの良さです。留学前に読んだ『アイルランドを知れば日本がわかる』(林景一著・角川新書)という本に、こんな一節があったのでご紹介します。「アイルランドは自国が何百年間も虐げられ、負け犬であった時代を経てきたことから、弱い者びいきである。たとえば、南アフリカの独立のためのボーア戦争に義勇軍が参加するかと思うと、独立した南アの黒人差別政策アパルトヘイトには最も強硬な対応をして反対を貫いた。また、ODAという形で最貧国を重点に援助の手を差し伸べているが、いわゆる“ひもつき援助”は皆無で、見返りを求めない。国内外を問わず、慈善活動には国民的支持と理解がある」。
アイルランド人には温厚な人が多く、こちらが曖昧な答え方をしてもあまり気にしません。上記の一節のように、献身の精神が根強く、何か困ったことがあれば親身になって助けてくれました。お酒が大好きで陽気なアイルランド人、パブで流れるアイリッシュ音楽、ケルト文化の神秘的な遺跡、愛らしさと美しさを感じさせるケルト十字…そうしたすべての文化、歴史に、人との交流が大好きなアイルランド人の温かさというものを感じることができました。
日本の良さを再認識し、日本人としての意識が高まる
私はこの留学体験を通し、アイルランドやヨーロッパの国々をこれまで以上に身近に感じるようになったとともに、母国である日本への愛国心も深めることができました。遠くヨーロッパから自分の国を見つめることで、ホスピタリティ、礼儀正しさ、勤勉さなど、日本の良さ、日本人の良さというものを改めて発見することができたと思います。
将来、国際的な舞台で仕事をする際は、国際人であると同時に「自分は日本人である」という意識をしっかりと持ち続けたいと思います。海外の人々に出会えば、彼らは私という人間を通して日本という国を判断します。もちろん、一個人としての私を見ることもあるでしょうが、それ以上に、彼らの目には日本人としての私が強く映ることでしょう。その時に自分のアイデンティティをしっかりと持っていなければ、ビジネスをする上でも人間としても、信用に足る人物だと思ってもらえなくなるかもしれません。
海外にいた時に感じた「日本っていいな」という気持ちを、より多くの人にも感じてもらえるよう、自分自身が日本という国をより理解し、日本人であるという意識を強く持とうと思います。今回の留学で得られた国際感覚や語学力で満足しないよう、さらなる向上をめざして、これからも勉強に励んでいきたいと思います。