Report活動レポート

起業家精神教育(アントレプレナーシップ)を学ぶ

溝渕起基
高崎経済大学(経済学部3年)

留学期間:
2022年9月4日~2023年5月12日
留学先:
アイルランド(ダブリンシティ大学)

起業家精神教育(アントレプレナーシップ)を学ぶ

留学の目的

本留学の目的は3つありました。まず、英語をプレゼンテーションやグループワークといった実践的な場面で使用すること、起業家精神教育を学ぶこと、そして日本人のいない環境でどの程度のことができるのかを知ることでした。

留学先で学んだこと

留学先のダブリンシティ大学ではBusiness学部に所属しました。そこでは正規の学生が多く、日本人の割合が低い環境でした。これは私が日本人のいない環境を経験したかったという目的に合致しており、自分にとって最適な環境でした。大学での講義はグループワークやペアワークが中心で、異なるバックグラウンドを持つ学生たちとの交流の機会もありました。

受講した講義の中で最も印象に残った講義があります。それは「New Enterprise Development Project」という講義です。この講義は2セメスターにわたって行われ、段階的に事業の開発プロセスを学ぶ機会を得ました。初めは課題の発見から始まり、それに基づいて解決策を考案し、具体的な事業計画を作成するという流れで進められました。毎週1回の講義と、課題の提出に向けて平均週に1回程度チームで集まり、ミーティングを行いました。

私は現地のアイルランド人学生5人とチームを組み、共同でプロジェクトに取り組みました。チームで日本人はもちろん私だけで、初めは議論に参加するのにやや苦戦しました。ですが、チームに貢献するために事前に主張したいことを準備したり、デザインなど得意分野を認知してもらったりしてチームに貢献できるよう努めました。

私たちのチームは、子供用靴のサイズ調整を簡単に行えるインソール「Adjusty」を考案しました。このアイデアは、日常的に子供の成長に伴って靴を買い替える必要性を解消し、経済的な利益や環境への貢献をもたらすものでした。課題の発見から始まり、コンセプトシートや事業計画書の作成、さらにはマーケティング用の商品紹介動画の制作まで、プロジェクトを具体化するためのステップを体験できる様々な課題が課されました。

プレゼン

本講義の最終成果物は、アイルランドの経営者や起業家の前でのプレゼンテーションでした。このプレゼンテーションは、実際に彼らからの出資を得ることを想定したもので、事業アイデアとそのポテンシャルを伝えるために行われました。その後、経営者からのフィードバックや質疑応答を通じて、自身のプレゼンテーションスキルの向上とビジネスアイデアの洗練を図ることができました。

新たな視点と意識の変化

ここまで述べてきた通り、私は留学先で自身の関心テーマである起業家精神教育を追求してきました。講義やグループワークで最も重視されたポイントが、起業家として取り組む課題を自分ごととして考えることでした。そのため、この学びを転用するには「自分ごとに感じて心から解決したい課題」を見つけるところから始まると感じました。

私の留学体験は、この「自分ごとに感じて解決したい課題を見つける」に対して貴重な視点をも与えてくれました。

本留学は私にとって初めての留学で、言語の壁を感じ、異文化コミュニティへの適応を困難に感じました。学部留学という選択をし、日本で英語力をそれなりに磨いてきたにも関わらず、です。

留学を通じて私が実感したのは、母国で滞在先の言語を使えるレベルに達していなければ、留学先での生活の質が大きく損なわれるということでした。言語力が乏しいと、仕事の選択肢が制限され、交友関係も限定的になります。このことが、「外国人」が地元でコミュニティに溶け込む難しさを私に痛感させました。

ここで日本に目を向けてみると、私が住んでいる群馬県でも、製造業を中心に外国人材の採用が進んでいます。彼らが直面する課題は、言語力だけでなく、文化の違いからも生じます。これらの課題が解決されなければ、彼らの能力が十分に発揮されず、ビジネスチャンスや地域の活気を損なう可能性があると私は感じています。

留学以前、私は群馬県の外国人労働者を単に「たくさんいるな」と感じるだけでした。しかし、アイルランドで自身が「外国人」となった経験を通して、彼らが抱える課題に気づきました。それは他人事ではなく、「自分ごと」として感じることができました。これは私が起業家精神を深める上で重要な視点となり、帰国後に取り組みたい活動にもなりました。

将来の展望について

具体的な将来の進路はまだ決まっていませんが、留学を通じて得た経験から、国内の企業に就職するだけでなく、海外企業での就職も視野に入れたいと考えるようになりました。異なる文化やバックグラウンドを持つ人々と協力しながら仕事に携わりたいという意欲が強まりました。

また、群馬県にいる外国人材や留学生に向けた活動をしていきたいと強く考えるようになりました。具体的には、日本に来る前から日本語を学ぶ環境の整備や、新たに来日した人々のためのMeetupイベントなどの企画を進めていきたいと思っています。